JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

黒い鳥と四番目の色要素
Birds in black and the fourth element

 特別展示「アヴェス・ヤポニカエ」の第11回として、「鴉は黒いか」が開催中である。今回のタイトルは「ただの黒い鳥だと思われがちなカラスを改めて見てみましょう」という意味であるが、生物学的に答えを言ってしまえば、「鳥の目で見ればカラスは黒くない」となる。カラスの羽毛のうち、キラリと光る部分はだいたい、紫外線も反射している。そして、鳥類にはヒトには見えない紫外線領域まで見えている。さらに、鳥類は紫外線領域に第四の原色をもつ、四原色型の色覚である。よって、鳥の目には、カラスの羽の紫外線反射がなんらかの「色」として見えているはずなのだ。ただし、それがヒトと同じ、赤から紫までの色相環に収まっているかどうかはわからない。ヒトには想像もできない紫外線色があるかもしれないからだ。三原色しか知らない我々には、紫外線色があったとしても知覚できないし、その色を想像することもできない。他種の動物の視覚をそのまま再現することは、残念ながら不可能である。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Hajime Matsubara

コラム一覧に戻る