JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

【予告】特別展示『アヴェス・ヤポニカエ〈11〉 – 鴉は黒いか』

2025.07.19-2025.10.19
STUDIOLO

 カラスは日本人にとって身近な鳥である。また、その黒一色の色彩は墨絵との相性がよく、日本画のモチーフとしてもしばしば用いられる。
本展示では、河辺華挙の描いた『鳥類写生図』第十九巻、「鴉」と題された一巻を取り上げる。鳥類写生図は日本画の手本となる粉本であるが、眞写(実物を前にしたスケッチ)であるのみならず、羽毛の枚数までもが書き込まれている。これは紙に描いた標本と言ってよい。また、ポーズ集としての役割ももっている。
ここに描かれたカラス像の多くは敢えてその色を廃し、羽毛一枚ずつを線描で記録している。これは一見すると、カラスに見えない絵でもある。我々が、いかに「黒い塊」としてカラスを認識しているか、その証左でもあろう。しかしながら、色を介して見るのではなく、羽毛が重なり合って形作られた物体として見るならば、カラスはまさにこのような姿であるとも言える。
 生物としてのカラスもまた、同様である。あまりに身近であり、かつ印象のよくない鳥であるがゆえに、カラスをじっくりと見る機会は少ない。今回はカラスの剥製と日本画を並べ、粉本を我々の目の手本として、「黒い鳥」ではなく、リアルなカラスの細部まで観察していただく機会としたい。
 合わせて、その他のカラス科の鳥たちもご紹介する機会とする。近年の研究により、ルリカケスがカケス類の祖先種である可能性が出てきた。オセアニアからユーラシアへと広まりつつ多様化したカラス科の故郷の一つは、日本かもしれないのである。

主 催:東京大学総合研究博物館

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