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HAGAKI
研究者コラム

反転博物館 1
Flipped Museum 1

 2022年2月にアジア大学連盟(AUA)の大学博物館に関するカンファレンス「アジア文明のための反転博物館を共同キュレーションする:ブレンド型研究と教育のアプローチ(Co-Curating Flipped Museums for Asian Civilization: A Blended Research and Teaching Approach)」がオンラインで開催された。本カンファレンスに参加するにあたり、初めて「反転博物館」というアイディアに出合い、これについて考える機会を得た。反転授業(flipped classroom)という言葉は、聞いたことがある人も多いかもしれない。従来は授業で教員から学生への知識伝授が行われ、宿題として学生が各自で復習や応用に取り組んでいたのに対し、これを反転させ、学生がオンラインリソース等を用いて事前学習として知識習得を行い、授業は質疑応答・ディスカッションや演習のためのアクティブラーニングの場とする教育の方法である。反転授業は、学生の理解度のみならず、学びの主体性や協調性を高める効果があるといわれている。反転博物館とはこれを応用したものであると理解すると、インターメディアテクの小中学校対象教育実験プログラム「アカデミック・アドベンチャー」の目下の課題に結びついた。大学生ボランティアが小中学生の展示案内役(インターメディエイト)を務めるこのプログラムでは、コロナ禍により、対面での実施ができないなか、2020− 2021年度の2年間はオンライン版の実験に取り組んできた。今後再開する対面でのアカデミック・アドベンチャーとオンライン版とをどのように運営していくか。反転博物館のアイディアから、オンライン版のアカデミック・アドベンチャーを来館前の事前学習に位置づけ、対面でのプログラムと組み合わせてみてはどうだろうかと構想している。

寺田鮎美(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Ayumi Terada

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