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HAGAKI
研究者コラム

列品計画
Display Plan

 展示列品を考えるうえで興味深く、対照的にも見える二つの施設がパリの国立自然史博物館にある。進化大陳列館(写真)と古生物学・比較解剖学館である。進化大陳列館は、エコール・デ・ボザールの建築家ルイ=ジュール・アンドレが設計し、1889年のパリ万国博覧会のときにオープンした。新古典主義的な外観を維持しつつ、1994年にポール・シュメトフによって改装され、内部は鉄骨を駆使した壮大なアトリウム空間となっている。中央ホールにはアフリカの哺乳類の剥製が大行進のように並べられている。方舟に乗り込むかのようなその隊列は、フィールドの再現というよりも、動物の多様性の縮約された表現である。ここでは「選択と配列」という展示上の意図が感じられる。一方、古生物学・比較解剖学館は、パリ万博の機械館で知られるフェルディナン・デュテールの設計で1897年に完成した。「動線計画」のコラムで紹介したアルテ・ピナコテークに似た、直進型の細長い平面形の施設である。この比較解剖学の展示室は骨の殿堂とも呼べる場所で、約1000点の骨格標本で埋め尽くされている。脊椎動物に共通する骨格の構成から、系統群の相違点にも注目している。ここでは骨格という形式をベースとして「全容の開示」が意図されている。二つの施設の展示列品は、ミュージアムにおけるコンテンツとアーカイヴの可能性を示している。物語を選び取るのか、すべての題材を見せるのか。このような部分と全体の取り扱いには、さらなる展開の余地がありそうである。ミュージアムのネットワーク化による全体像の横断的拡張、異種要素の埋め込みや再編的な読解によるアーカイヴ自体の変容、限られたオブジェクトによる最小コンテンツとしての外部展開などである。

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)
Fumio Matsumoto

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