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HAGAKI
研究者コラム

20世紀の建築(住宅建築編)
Architecture in the 20th Century (Residential Architecture)

 20世紀の住宅建築を集めた模型を製作した。縮尺1/100の模型18点を3Dプリンタで出力し、公共建築編と同様に集合的に配置した。竣工年順に作品と特徴を列記する。1.ドミノ・ハウス:柱と床スラブからなる近代建築の祖型(アーキタイプ)。2.シュレーダー邸:家具から空間へと進化した面と線による「デ・ステイル」。3.ロヴェル・ビーチ・ハウス:空間形態と新たな言語によって具現化する「空間建築」。4.メーリニコフ自邸:孤高のアヴァンギャルドの凍結された隠棲地。5.サヴォア邸:「柱と壁の分離」がもたらす近代建築のデザイン・ボキャブラリー。6.マラパルテ邸:海原を臨む断崖上のソラリウムにいたる大階段。7.ブロイヤー自邸Ⅱ:キャンティレバーで支持された浮遊するロングボックス。8.イームズ自邸:大量生産部材の活用による新しい生活空間のデザイン。9.ファンズワース邸:ガラスとスチールで囲われたユニヴァーサル・スペースの原点。10.立体最小限住宅No.3:極小の居住空間に込められた平面と断面の創意。11.51C型:食寝分離と就寝分離を実現した2DK住居の原型。12.スタール邸:都市の眺望に全面的に開かれた近代住宅のアイコン。13.母の家:見なれた外形に内包された多様性と対立性。14.シーランチ・コンドミニアム:海沿いの荒涼たる自然環境に向き合う集合住宅。15.中銀カプセルタワービル:交換可能な住居ユニットからなるメタボリズムの記念碑。16.住吉の長屋:生活の中心に外部空間を挿入した長屋。17.中野本町の家:家族の記憶が込められた内なるユートピア。18.ボルドーの住宅:住まいの中心を貫く生活空間としてのエレベータ。以上で取り上げた建築の方向性として、壁の非構造化、線・面・空間の造形、建設の工業化、機能無限定の空間、最小限の空間、新陳代謝、新生活の提案といった特性が見えてくる。「20世紀の建築」は本館の特別展示『空間博物学の新展開—UMUT SPATIUM』で展示中である。

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)
Fumio Matsumoto

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