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HAGAKI
研究者コラム

社会空間モデル

 リモートワークが普及し、全員が同じ現場に揃う機会が少なくなった。仕事関連の会議はオンライン開催がとても多い。一方で、街中の人出が徐々に回復し、大学は対面教育に戻ろうとしている。業務や教育の新しいスタイルは定着するのだろうか。写真はコロナ禍以降の人間と空間の関係を示すために試作した社会空間モデルである。中央の空間は主人公X氏の自室である。格子状の棚のように見えるのは、Zoom等のリモート会議ツールの画面であり、これを利用してX氏は他者と交信している。右側に浮いているのは他者の空間群であり、その所在地はバラバラであるが、情報システムを介して時空間が共有されている。一方で、左側に並んでいるのはX氏が属しているコミュニティである。学校や職場や家庭などであり、これらは通常は「場所の空間」として一つの建物にまとまっていることが多い。このように物理的に隣接した「場所の空間」と、情報ネットワークによって結び付けられた「関係の空間」が共存しているのが現代社会の特徴である。つまり、人間どうしの近接性を「距離の近さ」と「つながりの強さ」の両面から考えることができる。これまで、学校やオフィスのような比較的大きな建築類型をベースに都市環境が構築されてきたが、それに加えて、より小さな個人レベルの空間の結びつき、すなわち空間類型の分散連携の可能性を考慮すべきであろう。実空間と情報空間の共存は今後も継続するだろうが、そこで問われるのは実空間の計画ヴィジョンである。この模型は本郷本館で始まった特別展示『空間博物学の新展開/UMUT SPATIUM』で展示されている。

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)
Fumio Matsumoto

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