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HAGAKI
研究者コラム

首を長くして

 ダイサギという鳥がいる。いわゆる「しらさぎ」と総称される中で最大、長い首を持ったサギだ。コサギのようにせかせか歩き回らず、じっと佇んで獲物を待っているか、水際でゆったりと足を運びながら餌を探していることが多い。餌を見つけるとじっと目を据えて動きを止め、そろそろと首を引き絞るように縮めて、頭を獲物に向けて「発射」するごとく、水中に突っ込む。まるで矢を放つ猟師のようだ。餌は基本的に小魚だが、ダイサギやアオサギはかなり大きな餌でも飲み込んでしまう。さて、ダイサギが水面に目を据えたまま一歩、一歩と歩くのを見ていると、不思議なことに気づく場合がある。彼らは時々、首を横に傾けるのだ。それも、見ている方向とは反対側に倒して、斜めに透かして見るような姿勢をとる。これは波の影響を避けているのか、反射避けなのか、20年も前から不思議に思っているのだが、いまだに「この条件の時は、こちらに倒す」と見定めることができないでいる。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Hajime Matsubara

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