JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

仏像工学

 この度、インターメディアテク3階の常設展示部分を更新し、仏像の模刻作品6点を展示する『仏像工学――追体験と新解釈』を開催する運びとなった。今回展示している模刻作品は、作者が制作を通じて当時の造像技法を具体的に追求した研究成果でもある。そのため、「模刻」という言葉だけでは伝わりにくい程に、様々な要素を兼ね備えている。制作を通じて得られた新たな解釈についても、キャプションに加える形で掲載している。立体物を手作業で模刻する作業は非常に複雑で難しい。輪郭線は視点を変えれば無限に存在するため、基準となりにくい。常に様々な視点から観察し、慎重に作業を進める必要がある。作者は、扱う刃物が小さくなる模刻制作の終盤に、先人の技術の高さと、古典美術の造形の奥深さを感じ取る。非常に地道な作業ではあるが、作品が徐々に完成していく様は、作者のみが得られる貴重な喜びの一つであり、その後の活動にも大きく活かされている。このような展覧会を開催する事が、今後の文化財保存にも役立つのではと考えており、継続して開催していきたい。

菊池敏正(東京大学総合研究博物館特任助教)

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