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HAGAKI
研究者コラム

巣ごもり

 巣ごもり需要という言葉がすっかり定着した感があるが、春から初夏はまさに、日本で繁殖する大半の鳥にとって「巣ごもり」の時期である。さて、都市部でも多くの野鳥が繁殖しているが、その中にはツミという小型の猛禽も含まれる。ハイタカ属なので見た目はまさに「タカ」だが、大きさはメスでもハト程度、オスはハトよりも小さく、ヒヨドリと大差ない。この歴とした猛禽が、都市の公園でしばしば繁殖している。東京23区内でも。写真は先日、私の家の近くの公園で見かけたツミだ。オナガが大騒ぎしていると思ったら、その真ん中にツミがいた。オナガにとってツミは天敵なので、できれば追い払いたいのである。だがツミも負けずに反撃している。これは…… と思ったら、ツミは折り取った枝をくわえたまま、木立の中へ消えた。これを追って行くと、案の定、樹上に作りかけの巣があった。なお、巣に近づきすぎると繁殖の邪魔になる上、ツミは気が強くてあの鋭い爪で頭を蹴りに来るから要注意である。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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