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HAGAKI
研究者コラム

新入りの都市鳥

 イソヒヨドリ、漢字で書けば磯鵯。名前の通り海岸の磯や防波堤まわりによくいる。オスは背中が青、腹が赤錆色と目立つ配色で、電柱の上など高いところに止まって囀る。非常に目立つ鳥だ。ただし、青い海と岩場を背景にすると、この色合いも不思議と馴染んでしまう。この海辺の鳥が、ここ20年ほどの間に、どんどん内陸の鳥になりつつある。彼らが目指しているのはビルだ。崖の割れ目などに営巣するイソヒヨドリにとって、大きな建造物は岩山の代用品なのである。営巣に適した隙間も、看板の裏などにいくらでもある。筆者の実家は海から40キロ以上離れているが、ここでも数年前からイソヒヨドリが囀っている。東京駅前でこそまだ見たことがないが、明治安田生命ビル付近でミミズをくわえて飛ぶメスを見たことならある。イソヒヨドリの英名はBlue Rock-Thrushつまり「青い岩ツグミ」で、海岸というより、岩場や崖地の鳥と考えるべきなのだろうが、今後、大都市にどう適応してゆくのか興味深い。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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