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HAGAKI
研究者コラム

映像の意志

 大学ではオンラインの授業が続いた。前期の「空間デザイン実習」に続き、後期は「映像デザイン実習」を開講した。映像制作を通して表現の可能性を探究する教養前期の授業である。最初のレポートは「INSPIRED BY」と題し、既に公開されている動画にインスパイアされた自身の映像作品の企画書を作成した。スピンオフ、コラボ、リメイク、トレイラー、続編など制作スタンスは自由であり、オリジナル作品のラインナップ<YouTube動画やMVから『日本のいちばん長い日』まで>の多様性も興味深い。続いて、15人の学生は2つの課題映像の制作に取り組んだ。課題1は個人による制作であり、テーマは例年どおり「TOKYO STORY」とした。主題の捉え方はさまざまで、見えている実体、意識の対象、操作の題材としての「東京」が扱われる。コロナ禍の都市に応答しつつ、その様相だけに回収されない表現力をもった「Le Masque Jetable(使い捨てマスク)」ほかの作品があった。課題2はグループによる制作であり、今年のテーマは「PROXIMITY(近接性)」とした。メンバー同士のリアルな会合が難しいなかで、ネットワークを活用して作業を分担し、クラウド上での遠隔同時編集を行うグループもあった。提出された作品は力作揃いであった。「色鉛筆」(上図)は夢と現実の近接性、「PISTON TOUCH GAME」(下図)はリアルとバーチャルの相関性、「ヒトコロリ」は時間差を経たつながり、「シマウマとパラシュート」は物理距離と精神距離の懸隔がコンセプトに据えられている。いずれの作品も物語の構成および動態の創出に工夫をこらしている。このような状況下でも、表現の意志があれば道は開かれると感じた。

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)

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