JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

クロサギ

 この標本は山階鳥類研究所より寄託されたうちの一つ、クロサギである。シラサギという言葉があるが、これは白いサギの総称であり、特定の種を指す言葉ではない。一方でクロサギはEgretta sacraという種の標準和名である。海岸によく見られ、どちらかといえば南方に多い。ところがややこしいことに、クロサギには白色型が存在する。クロサギなのに白いなど詐欺同然である。沖縄で黒いクロサギと白いクロサギが並んでいるのを見たことさえある。サギといえば白い−−その認識から「サギなのに黒い」という意味でクロサギとしたのだろうが、なんともやっかいな鳥だ。ちなみに熱帯では白色型が、温帯では黒色型が多いという研究もあり、サンゴ礁の白い砂浜をバックにするか、黒っぽい岩場をバックにするかによって有利な体色が違うのではないかと考察されている。もっとも、先述したように同じ場所に2タイプが共存していることもあるので、絶対的な差ではないのだろう。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

コラム一覧に戻る