JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

インターメディアテク・レコード・コレクション(18)
インディーズの先駆け

 ニューヨークのレコード店「コモドア」が1938年にレコード製作事業を開始して以来、ジャズ界に多数の小規模なレコード会社が現れた。1940年に起業した「キーノート」は奇妙なレコード会社だった。もともとはソビエトの音源の再発盤を専門的に扱っていたものの、1943年から裕福なアジア系プロデューサーであったハリー・リム(1919-1990年)が加わり、スウィングからモダンジャズに亘る多数の名演を録音し、発売した。リムは私費を投じてまで録音技術と盤質に拘りつつ、傑出した音楽性を持ちながらもリーダーとして録音される機会のなかったミュージシャンを中心にセッションを組んだ。他のインディペンデント・レーベルと同様、オーケストラなど大編成のバンドを雇えなかったため、キーノートは少人数による「スウィングテット」という編成を主に録音した。しかし、大手レコード会社に対抗するには、プロデューサーの情熱だけでは足りなかった。倒産したキーノートは1948年、マーキュリーに買収された。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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