JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

インターメディアテク・レコード・コレクション(7)
アルバムの可能性

 クラシック音楽では数十分に及ぶ作品はごく当たり前にある。10インチSP盤には3分半しか収録できないことから、レコード会社は早くも一つの作品を分割して複数のレコードに収めた「アルバム」という形式を採った。ジャズメンは逆に、一枚のレコードに収まるように演奏自体を構成した。一方、クラシック音楽のアルバムに倣って1933年にブランズヴィック社が企画した『ブラックバーズ・オフ1928』を発端に、ミュージカルやジャズのSPを束ねたアルバムも普及した。アルバムには表紙があり、ライナーノートが付く。それまでレコードのラベルに範囲が留まっていたグラフィック・デザインが、レコードという商品に全面的に施されるようになる。ジャズ・アルバムの金字塔は、SP時代末期の1949年にノーマン・グランツが制作した『ザ・ジャズ・シーン』だ。グランツは、このコンセプト・アルバムを同時代のジャズの「鏡」と見なし、選んだミュージシャンを自由に演奏させ、曲に自身が解説を添え、ジョン・ミリの写真とデイヴィッド・ストーン・マーティンのイラストを挿入した。しかし不思議なことに、SP盤の技術的限界から解放された現在でも、大抵のポップソングはいまだに3-4分を超えない。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

コラム一覧に戻る