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HAGAKI
研究者コラム

新建材

 鳥は自然にあるものを使って巣を作る。だが、それは自然物だから使うわけではない。長さ、強度、弾力性など、機械的特性を満たしていれば巣材として使える。例えば、ヒヨドリやスズメは藁など枯れた植物を使って営巣するが、代わりにビニール紐を使うこともよくある。実際、巣を調べると、ビニールの切れ端やティッシュペーパーまでもが巣材に混じっていることはよくある。彼らの目を通すと、そういった人工物も「使えそうな巣材」なのだ。新建材の利用で有名なのはカラスで、彼らは針金ハンガーをよく利用する。だが、近年はハンガーの材質がプラスチックに変わり、クリーニング屋がつけてくるのも簡易なプラハンガーになった。ところがカラスもこれに適応し、新・新建材としてプラハンガーも使い出したようである。ただ、それでも針金ハンガーの利用は非常に目立つ。プラハンガーの普及度に比べて利用頻度が低いのは、やはり針金の方が自在に曲げられて使いやすいのかもしれない。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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