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HAGAKI
研究者コラム

デジタル時代の借景

 現代美術館の展示会場に作品が並ぶなか、白い箱が空中に浮いている。長さ5メートルのスクリーン4面が箱を形作るように天井から吊られている。その内側に入ると、富士山の山頂に漂う雲の古い映像が連続的に投影されている。ある笠雲がスクリーンからスクリーンへと流れ、そしてまた他の雲が現れる。気象学者・阿部正直(1891-1966年)が1926年から継続的に撮影した雲のフィルムをアーカイブ化するなかで、「CLOUD BOX」と題した映像インスタレーションを構想した。空中に浮いている画面にあらゆる種類の雲が浮かび、屋内にある展示会場に一つの窓を切り開き、新たな時空間を生み出す。立ち位置によっては、雲が投影される画面が空中に浮いているように、もしくは壁に穴が開けられたように、あるいは天井自体が雲で覆われているようにも見える。日本庭園の基礎概念である「借景」をデジタル時代の現代美術館の会場で再解釈したものだ。写真は2017-2018年にニュルンベルク新美術館で開催された、日本の美学をテーマにした特別展示の会場風景。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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