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HAGAKI
研究者コラム

豚足から骨を取り出す28の方法 (1)お湯に浸ける

 皆様平素よりご来館まことにありがとうございます。平成最後のクリスマスはいかがお過ごしでしたか? 自分は胃炎で苦しんでいました。1個目の豚足は、自分が博物館の標本として骨を取り出す際によく用いていた「お湯に浸ける」方法で対処しました。皮や筋など刃物を使って取り除き、指一本ごとネットに包み下処理をした豚足を水にいれ、一緒に70℃~75℃まで温度を上げていきます。沸騰はダメです。この方法は、料理で出汁を取る方法とほぼ一緒です。出汁を最後までとり切って骨だけが残る、それが「お湯に浸ける」方法です。今回の機材は特別なものではなく、炊飯器の保温機能を利用しました。7日ほど浸けると硬い筋や軟骨まで溶け、外側の軟部組織を取り除くことができますが、内側にある骨髄を取り除くためにはもう2週間かかります。温度変化で骨が割れないように4日おきにお湯を交換しながら浸けて、骨髄の脂も可能な限り抜いていきます。残念ながらそれでも完全には抜けきらないので、この後有機溶剤に漬け込んで脂を抜く必要があります。劣化が少なく、安心して触れる骨が得られるので、自分は好きな方法です。

中坪啓人(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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