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HAGAKI
研究者コラム

地上13mのサバの頭

 と書いてもなんの事やらわからないと思うが、起こったことをありのままに話そう。オフィスで作業中、私のすぐ後ろの窓をかすめて黒いものが飛んだ。カラスだ! 近い! と思ったら、2メートルほど離れた窓辺にヒョイと止まった。ガラスの向こうに20センチほど、平らな場所があるからだ。カラスはそこに止まって、くわえていた物を置いた。そして、つつこうとして顔をあげ、私がじっと見ているのに気づいた。カラスは慌てて逃げ出し、オフィスの外を旋回しながら「カア、カア、カア」と未練たらしく鳴いた。こういう時、カラスは餌を捨てて逃げる。やはり命の方が大事である。それはともかく、カラスが置いて行ったのは、サバの頭であった。切り口がきれいなので、包丁で捌いたもの……居酒屋のゴミ袋からでも持ってきたのであろう。このサバの出所がわかれば、カラスの行動圏が推測できるはずだ。野外調査は大手町のガード下から始めてみよう。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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