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HAGAKI
研究者コラム

水中を飛ぶ

 IMTの2階に、二足歩行する動物の骨が集まっている。この中に、マジェランペンギンの骨格もある。ただでさえ奇妙なペンギンだが、骨格にするともっと奇妙だ。まず、こんなに体幹が直立した鳥はいない。大腿骨は脊椎と直角、地面とほぼ水平に伸びる。そして膝を直角に曲げ、ふしょ節(鳥のくるぶしから指の付け根までを構成する骨)と指骨をべったりと地面につけて立っている。ペンギンは立っている間じゅう、空気椅子状態なのである。さらに、飛びもしないくせに妙に頑丈で長い胸骨、発達した竜骨突起も目に付く。そして何より、恐ろしく丈夫そうな烏口骨、そして太い腕の骨格。ペンギンの翼(正しくはフラッパー)は大変な力を持っていて、コウテイペンギンに思いきり殴られれば骨折しかねない。これらは全て、抵抗の大きな水中を飛ぶように泳ぎ、かつ氷の上を延々と歩くためだ。あのコミカルな見かけの下で、ペンギンだって苦労しているのである。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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