JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク
HAGAKI
研究者コラム

八角形の柱

 インターメディアテクの柱型は八角形である。KITTEのアトリウムにも八角形の柱とそのモチーフが残されている。なぜ八角形なのだろうか。一つの手がかりは当館のIMTロゴマークに示唆されている。1931年に竣工した旧東京中央郵便局は、相対する東京駅の配置に呼応して外壁が「へ」字型に折れている。45°屈曲したこの外形に対して、八角形の独立柱ならば向きを変えずに整然と配列できる。かたや1914年開業の東京駅には八角形の大ドームがあり、既往の計画でも45°の配置が生かされていた。「八角形」は中央郵便局が東京駅とうまく共存するための幾何学だったのではないか。あらためて展示室の柱を見上げると、八角形の一辺の長さと天井の梁幅が一致したスマートな納まりである。実用面においても、角が面取りされた柱は現業室での円滑な搬送業務に適していた。1階の現郵便局に立ち並ぶ黒大理石の八角柱は、逓信省技師の吉田鉄郎が敬愛したストックホルム市庁舎にも見いだせる。八角形の柱には、設計者のしなやかな合理主義と意匠へのこだわりが凝縮されている。

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)

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