2022.04.01-2023.03.31
小・中学生の皆さまへ
アカデミック・アドベンチャーでは、IMTボランティアの大学生が「インターメディエイト」(=媒介者)として、皆さんのアドベンチャーの案内役を務めます。IMTボランティアは、東京近郊のさまざまな大学に所属し、それぞれの専門分野の勉学や研究を行いながら、JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」の活動をお手伝いしています。
今年度は、館内でのアカデミック・アドベンチャーを再開し、オンライン版アカデミック・アドベンチャーの実験にも取り組んできました。私たちIMTボランティアが考えたアドベンチャーの内容をご紹介いたします。
袴田光平(東京農工大学大学院農学府農学専攻生物生産科学コース修士2年)
皆さんは、ミュージアムで展示物を見る時に、デザインや質感などの観察から一歩踏み込んで、展示物と私たちの生活との関わりについて考えたことはあるでしょうか。ふと目に留まった展示物をよく観察し、自由に想像を膨らませてみることで、意外なところで私たちの生活との接点が見つかるかもしれません。私のアカデミック・アドベンチャーでは、明治時代に産業の近代化が推し進められた際に、教育現場で使われていた道具である「ものさし」と「機構模型」を紹介します。これら、科学技術の基礎を担ってきたともいえる展示物を皆さんの目でじっくり観察してもらい、それぞれの発見を共有することで、その道具がどのように使われていたのか、そして現代の私たちの生活にどのように活かされているのかについて、一緒に掘り下げて考えていきましょう。このアドベンチャーを通して、「静止画」のようだった展示物が「生き物」としてよみがえる瞬間を味わうことができるでしょう。
古藤南(東京大学法学部3年)
ミュージアムの展示物は昔のものが多いというイメージがあるかもしれません。しかし、昔のものは当たり前のこととして後世に引き継がれるわけではなく、誰かが守り残してきてくれたから、今、私たちがそれらをミュージアムで鑑賞することができているのです。私のアカデミック・アドベンチャーでは、自然金モデルに注目します。自然金モデルは、発掘された当時世界最大の金のレプリカです。自然金モデルは、誰が、なぜ、守り残してくれたのでしょうか。そして、レプリカをわざわざ作ったのはなぜでしょうか。何を伝えたかったのでしょうか。自然金モデルを観察して、色や形、質感など、皆さんは何を感じとりますか。それを作った人、残してきてくれた人に思いを馳せながら、「残す」ということについて、一緒に考えを深めていきましょう。
伊藤光(武蔵大学人文学部日本東アジア文化学科4年)
皆さんは普段、ミュージアムに行くでしょうか。ミュージアムに対してどのようなイメージをもっているでしょうか。皆さんが今頭の中に思い描いたものが、一面では正しいミュージアム像であるといえるかもしれません。見方、見られ方のどちらも多面性があり、唯一の正解というものはないと思います。私のアカデミック・アドベンチャーでは様々な通貨を、その価値と歴史に重きをおきつつ紹介します。価値というのも、また多様です。お互いが価値を認めているからこそ交換が成り立つのであり、貨幣の歴史からは、人々がどのように交換を円滑化させてきたかということがわかります。ミュージアムにはコインから紙まで多くの展示品があります。貨幣コレクションと一つにまとめられてはいても、それぞれの展示物がなぜ、どのような意図を持って展示されているか考えること、それらの特徴や相違点を感じ取ることができるか。アカデミック・アドベンチャーを通して、正解のない問題に取り組むミュージアムの奥深さを体験してみませんか。
栢場美帆(東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース修士2年)
「レプリカ」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか。ミュージアムの展示品がレプリカだったとき、皆さんは何を感じますか。なんだ、本物じゃないのか、とガッカリする人が多いでしょう。レプリカは、複製品という意味です。本物ではない、とガッカリするのはよくわかります。しかし、ガッカリするだけではもったいないかもしれません。私のアカデミック・アドベンチャーでは、「巨大ダイヤモンド模型コレクション」を紹介します。これはダイヤモンド・レプリカとも呼ばれており、その名の通り、巨大なダイヤモンドを複製したものです。ダイヤモンドの複製品がなぜミュージアムで展示されているのか、その価値がどこにあるのかを、近くに展示されている鉱物と比較したり、このレプリカが作られた当時の、自然に対する考え方を参考にしたりしながら考えていきたいと思います。
李 牧(大東文化大学国際関係学部国際文化学科2年)
ミュージムの面白さの一つには、モノを探し、その背景を理解することがあると思います。私のアカデミック・アドベンチャーでは、約1800年前の古代ガラスに注目します。ガラスは、日常生活に使っているスマートフォン、食事に使う食器、百貨店のショーウィンドーなど、皆さんの身近なところにたくさん見られます。ガラスの歴史は、意外にも長く、今から約4000年前にメソポタミア地域ではガラスが作られ始めました。そして、古代ローマ時代に吹きガラスと言う技法の発展と共にガラスの量産化が行われました。インターメディアテクのガラスの展示物を観察しながら、その歴史に触れてみると、身近にあるモノが面白く見えてくることでしょう。