JP Tower Museum INTERMEDIATHEQUE
HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

丸の内ドメスティック
Marunouchi domestic

朝、東京駅前で信号を待っていると、街の騒音に混じる小さな声に気づいた。「シリシリ」とも「チリチリ」とも聞こえる。音源は頭上方向。この季節、上からこんな声がしたら、ほぼスズメと思って間違いない。スズメの営巣場所は本来、樹洞だが、人工物でも構わない。少し離れて見ていると、餌をくわえたスズメが飛んできて、信号機のポールに止まった。ポールのてっぺん付近に何か四角いカバーがあり、下部が空いている。スズメはしばらく周囲を確認すると、サッとその中に飛び込んだ。ひとしきりヒナの声が高くなり、それがピタッと止まると、親鳥が飛び出して来た。巣はこの中で間違いない。下向きの開口部にどうやって営巣したのかと思ったが、内部のケーブルを足がかりに、枯れ草などの巣材をありったけ詰め込んで巣を作ったようだ。東京の玄関口にしてオフィス街であり、居住者がほとんどいない丸の内だが、スズメにとってはここが言わば家庭、日常の場である。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)
Hajime Matsubara

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