JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

特別展示『海洋生物――タラ号と驚異のプランクトン世界』

2014.10.11-2015.01.07
FIRST SIGHT

 プランクトンの多くは極小のため、肉眼では見えない。しかし、採取した海水のサンプルを顕微鏡で覗けば、多様にして新奇な形態をもつプランクトンが姿を現す。その微小な生き物が地球上でもっとも古くかつ多様な生態系を成し、食物連鎖の発端であり、地球上の半分の酸素を生成し、大気中の二酸化炭素の半分を吸収するなど、地球環境において全体的な影響を及ぼしている。こうした役割を担う生物はいったいどういうかたちをしているのか。本展で紹介する、プランクトン研究の第一人者であるクリスティアン・サルデ氏によるプランクトン写真は、海洋生態学を飛躍的に進歩させるのみならず、現代において「機能」を「形態」にするデザインの上でも、幅広い可能性の宝庫であるといえよう。
 1872年12月21日、英国ポーツマスを出航した英国海軍のチャレンジャー号は、3年半に亘り約13万キロの旅を経て、350カ所において採集した標本を持ち帰った。チャレンジャー号の研究成果は、4千種の新種が記載されるなど、海洋動物学を飛躍的に進歩させ、生態系の包括的な理解を一層深めた。50巻にも及ぶ『チャレンジャー号探検旅行学術報告書』には、新種の精密な線刻銅版図が収められている。19世紀の図版と、サルデ氏が駆使する最先端撮影技術によるデジタル写真を一堂に並べることにより、2003年よりアニエスベーがサポートする海洋観測船タラ号が21世紀のチャレンジャー号として、海洋生態学に輝かしい歴史を刻んでいることが明らかになるだろう。タラ号は10年前から地球上の海洋を巡り、3万5千点以上の標本の採取に貢献してきた。また、その研究成果のひとつである膨大なデジタル動画像は、データベースやインターネットをはじめ、現代に相応しいかたちで、チャレンジャー号の報告書に比肩しうる財産を築きつつある。本展の目的は、約140年前に海洋生態学に転機をもたらしたチャレンジャー号の成果と現代の先端研究の成果を引き合わせること、そして未知の世界を可視化しようとする人間の活動、それから新たに見出されるフォルム、その造形美と実用性について考察することにある。


主催:東京大学総合研究博物館
協力:クリスティアン・サルデ+「タラ号プロジェクト」+ agnès b.
Photo © C. Sardet

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