JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

【デジタル配信】蓄音機音楽会『ジャズ大集成(サミット)(74)――追悼 リー・コニッツ』

2020.07.15-2020.08.14
DIGITAL

主催 東京大学総合研究博物館
協力 梅田英喜+マック杉崎
企画構成 東京大学総合研究博物館インターメディアテク研究部門

 インターメディアテク内階段教室「ACADEMIA」にて、蓄音機音楽会を定期的に開催しております。「湯瀬哲コレクション」から1920—1940年代ジャズの名盤を厳選し、名機E.M.G.社「マークIX」をはじめとする様々な蓄音機で再生し、今やパブリックな場では鑑賞できない音の醍醐味を共有する機会を設けてきました。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、蓄音機音楽会の収録をデジタル配信します。
 今年4月に亡くなったアルトサックスの伝説リー・コニッツは玄人こそ愛するミュージシャンでした。1947年の録音デビュー以来、ピアニストのレニー・トリスターノの指導のもと、様々なモダン・ジャズ・オーケストラで演奏しながら独自の世界を築きます。それはまず、一瞬にして聴き分けがつくピュアにして高音のサックスであり、自由自在に展開される即興の自発性でした。ジャズ界において地殻変動を起こしたチャーリー・パーカーと同時代のアルトサックス奏者として、コニッツはパーカーの影響を受けつつ全く違う独自の道を拓きます。そのキャリアがあまりにも長かったためか、コニッツの初期活動がSP盤に吹き込まれたこと自体が今や驚きです。今回はデビュー録音を出発点に、レニー・トリスターノはもちろん、マイルス・デイヴィスやジェリー・マリガン、チャーリー・ミンガスやウォーン・マーシュとの演奏、そして様々なオーケストラによる録音を通して、若きリー・コニッツを取り巻いた環境をSP盤で振り返ります。

蓄音機音楽会シリーズについて
 「言葉をしまって置く機械」、「写話器機」、「蘇定機」、「蘇音器」― 音を録音し、それを無限に再生する仕組みが発明されてから、それが普及し、「蓄音機」という名称が定着するまで数十年かかりました。発明当時の人々は、音を発するこの謎の家具に関心を持ち、時には恐怖に襲われるほど当惑したといわれています。しかし、LPレコード、CD、そしてデジタルファイルの普及とともに、蓄音機は廃れ、ミュージアム等に残っているものはただの展示品となっています。本音楽会は、蓄音機を再生装置として再び活用し、機械がもつ本来の可能性を新たに味わうことを目的とします。
 東京大学総合研究博物館は様々な蓄音機を所蔵しています。音楽会では、蓄音機を用いて、レコードをはじめとする様々な音楽記録媒体を再生します。その中で最も貴重な音源が、2012年に総合研究博物館に寄贈された「湯瀬哲コレクション」です。ジャズを中心としたこの個人レコードコレクションには、一万枚のSP盤が含まれています。湯瀬氏が生涯に亘って形成したコレクションを最高級の蓄音機で再生することによって、希少な名盤を紹介すると同時に、デジタル時代とともに失われた「音」の厚みと奥行きを改めて共有したいと思います。ストリーミングの時代に、インターメディアテクの階段教室に集まり、昔ながらの音楽会を体験することによって、ミュージアムを「共感覚」の場に転換する企画となるでしょう。

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