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特別展示『アヴェス・ヤポニカエ――日本の鳥』

2014.08.05-2014.12.28
STUDIOLO

 古来より人は自然の風物を見続けて来た。かつて、日本人は鳥をどのように見ていたのであろうか。
 現代において鳥を観察するとしたら、それは自然科学であり、生物学、鳥類学である。体系化されたシステマ・ナチュラエ(自然科学)は古代ギリシャに端を発し、ルネッサンス以後、近代にかけてヨーロッパで発達した。日本において、現代的な意味での自然科学は明治時代になって西洋よりもたらされ、急速に浸透したものである。
 だが、明治以前に日本人が鳥を見ようとせず、学びもしなかった、などという事はない。当時の図鑑であり博物誌である図譜を紐解けば、そこに日本人が見た鳥の姿が描きとめられ、解説が付されている。これこそが、当時の日本人の目を通して見た、鳥の姿なのである。
 本展示では、毛利元寿(もうりもとひさ)によって江戸末期に描かれた「梅園禽譜」の写本を眼前に広げてみせる。梅園禽譜は江戸時代屈指の動植物図譜である「梅園画譜」の一部である。そして、山階鳥類研究所より寄託された標本を活用し、日本画に描かれた鳥の剥製を、絵と並べてみよう。すなわち、鳥を描いた画家と同じ視点を提供するのである。
 無論、この図譜は当時の知識をもって、伝統的な様式や画法という制約の中で描かれたアーティファクトであり、現代の見方からすればリアルとは言えない図版もある。しかしながら、剥製にせよ絵画にせよ、ある解釈と表現様式によって再構成された現実であることに違いはない。標本と対比することで、日本画にこめられた美とリアルを感じ取って頂ければと思う。
 日本人が鳥に見出し、そして表現した「美」のあり方は様々である。一例として、茶道に用いられる羽箒を取り上げたい。羽箒は元来、埃を払うための実用の道具であったが、後には儀式的・象徴的な意味をもって、清めの道具となったものである。一般には美しく、格調高く、珍かな羽が用いられる。瑞鳥であるツルは特に好まれたが、場に合わせて、また数寄者の好みによって、様々な鳥の羽が用いられてきた。この小さな道具は、基本的に羽毛を加工することなく作られる。染めることも切り揃えることもせず、ただ、選び抜いた自然の羽の造形を生かすことにのみ心を注いだのである。
 チャボや尾長鶏のように盆栽的に改造される品種もあれば、羽毛一枚さえ改変せずに作る羽箒の美もある。様式に則って描かれる絵もあれば、実際の鳥を前に写生された眞写もある。日本人の見つめた様々な鳥の姿をご覧頂きたい。


主 催:東京大学総合研究博物館

協 力:財団法人山階鳥類研究所、下坂玉起、飯田好日堂
羽箒監修:下坂玉起

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