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首長の像(gowe)

19世紀/ニハ族/ニアス島北西部、リダノ・ラホミ海盆(インドネシア)/石/バルビエ・ミュラー美術館旧蔵/ケ・ブランリ美術館所蔵

概要

ニアス島はインド洋スマトラ島近くに位置し、比較的小規模(120キロメートル長、40キロメートル幅)であるが、19世紀にはさまざまな素晴らしい石造彫刻があることで知られていた。ニアス島の建築、木造彫刻、そして石造彫刻は、様式的に北部・中部・南部の三つの地域に分けられる。起伏のある島の地形がこれら三つの地域を長期にわたり相互に隔ててきたためである。19世紀末、イタリア人地理学者エリオ・モディリアーニは島の南部地域で、ある首長に関する写真を撮影し、それを持ち帰った。この写真は、頭飾りやそのほかの装飾品がどのように身につけられていたか、またどのように組み合わされていたかをよりよく理解するための貴重な資料となっている。この石像は、胸の上で手を合わせた姿勢で座る首長を表す。この人物は自分の階級を示すしるしを身につけている。すなわち「ニファタリ」という、もとは金で作られたねじれ状の首飾り、長い耳飾り、ブレスレットである。円錐形の頭飾りの下部にある、額に巻かれた装飾付きのヘッドバンドは、彼の階級に求められる華美で豪奢な装飾がそれに関連した祭宴同様、十分に実現されていることを示す。この人物の仕草は見る人の関心を彼の腰に引きつけるが、この首長が男根により表現される男性性とバランスをとりながら、「人々の母であるがごとく」存在していることを意味している。ニハ族では、勲功祭宴が名誉ある称号の獲得を可能にするため、この祭宴が社会を支配している。この社会的プロセスは村長同士の競争を刺激するとともに、彫像が制作されるための強力な触媒となっていた。ある首長の勲功を祝して作られたこの石像は、先人の存在と精神とを長く記憶に留めさせるものである。