JPタワー学術文化総合ミュージアム インターメディアテク

アカデミック・アドベンチャー 2015

2015.04.01-2016.03.31

小・中学生の皆さまへ

 アカデミック・アドベンチャーでは、IMTボランティアの大学生が「インターメディエイト」(=媒介者)として、皆さんのアドベンチャーの案内役を務めます。IMTボランティアは、東京近郊のさまざまな大学に所属し、それぞれの専門分野の勉学や研究を行いながら、JPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」の活動をお手伝いしています。
 私たちIMTボランティアがアドベンチャーの内容をご紹介いたします。


磯部翠(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科理学専攻物理科学コース 修士1年)
世の中には、私たちが想像もできないような生活をしている生物や身近にあるのに普段は気づかないおもしろい現象がたくさんあります。私のアカデミック・アドベンチャーでは、そのようなことを感じられる展示物を取り上げ、観察と対話を通して、皆さんと一緒に世の中を少し違った視点から見る体験をしたいと思っています。ものをよく観察すると、様々な発見があります。それは、そのものの情報だけではなく、昔どこかで体験したことがある何かや思いもよらない自分の興味のツボかもしれません。よく考えると当たり前に思えることでも、ものを前にして考えたことは心に残ります。一方、考えながら見たものの印象もまた、強く残ります。私のアドベンチャーでは、皆さん自身の個人的な気づきを大事にしながらお話をしたいと思います。

阿部楓子(國學院大學大学院文学研究科史学専攻博物館学コース 修士2年)
私はアカデミック・アドベンチャーを、博物館の展示物をただ眺めているだけでは気づくことができない視点を発見し、博物館そのものを「楽しむきっかけ」にしたいと考えています。例えば、色とりどりの鉱物はキラキラと輝いていて、たくさん並べられているのを見ているだけで心踊ります。昔から人間は鉱物を様々な方法で利用してきました。アクセサリーや芸術作品の材料など、鉱物は意外と私たちにとって身近な存在なのです。皆さんが普段インターメディアテクを訪れ、展示された鉱物を眺めてキャプションを読んだ場合、鉱物学に基づいた理科的な知識を得ることはできるでしょう。しかし、その鉱物をどのように人間が利用したかという文化史は、その時には知ることができない情報ではないでしょうか。私のアドベンチャーを通じて人間の文化という視点から鉱物を見ると、それぞれの物語が見えてくるだけではなく、鉱物という自然から生まれたものと人間との関係を通して、現代の環境問題を考えることに繋がっていきます。些細なきっかけで発見した視点から自分の知識の幅が広がるという楽しさは、博物館に来ることの醍醐味だと思います。そうした視点や体験を私のアドベンチャーで伝えていきたいと思っています。

垣中健志(東京大学大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻日本史学分野 博士3年)
私のアカデミック・アドベンチャーでは、インターメディアテクにある展示物をただ見るだけでなく、その展示物を通して、歴史や学問について皆さんと一緒に考えていきます。ミュージアムにある歴史的なモノは、それ自体から得られる情報は限られています。しかし、そのモノが現在まで残った背景や理由を考えることで、より多くの情報を得ることができます。インターメディアテクには弥生式一号土器や古代エジプトのミイラなど、歴史的に貴重なモノが展示されています。なぜそれらのモノが歴史的に貴重なのか、そして、どうしてそれらを現代において研究し、保存していく必要があるのかという点について、実物を観察しながら考えていきたいと思います。これらの点は一見当たり前のことのようですが、こういった根本的な問題を深く考えることで、歴史の深遠さを理解してもらうとともに、学問の奥深さや意義を実感してもらえると思います。私のアドベンチャーを通して、インターメディアテクで歴史を学ぶことの意味を考え、あわせてミュージアムの面白さも伝えていきたいと思っています。

横山喜己(武蔵野美術大学 造形学部日本画学科 4年)
私はインターメディアテクにあるたくさんの展示物のなかでも、より自分が「おもしろい」「なぜ」と感じたものを皆さんと共有し、それについて思考してもらえるようなアカデミック・アドベンチャーを行っています。そのための工夫として、展示物の紹介の導入では、聞く人の身近な物事から話を始めることを大切にしています。インターメディアテクに展示されている作品や資料はめずらしいものばかりで、一見、私たちの日常からは遠いものに感じるかもしれません。しかし、展示物と関連した身近な話を糸口にすれば、展示物への距離がぐんと縮まり、皆さんに興味をもってもらえるのではないかと考えています。最近の私のアドベンチャーでは、赤瀬川原平の『零円札』を取りあげています。これは紙幣としては使用できませんが、本物の芸術作品として値がつけられています。この『零円札』の「本物」とは、一体何なのでしょうか。私が案内するアドベンチャーは、皆さんが自分なりの疑問を見つけ、思考を深めるためのきっかけにしていきたいと思います。

山本桃子(早稲田大学教育学研究科 学校教育専攻 博士1年)
私のアカデミック・アドベンチャーのテーマは「既存の枠組みを疑う」です。例えば、コウモリは今でこそ当たり前のように哺乳類に分類されていますが、ギリシア時代や江戸時代の書物には鳥類として掲載されています。このように、今の時代では当たり前になっている事柄が必ずしも過去に当てはまるわけではないことから、何事にも批判的な視点を忘れないことが大切であるというメッセージを、アドベンチャーに参加した皆さんとのやりとりの中で伝えたいと思っています。「批判的」というとネガティブなイメージがついてまわるかもしれません。しかし、ここでいう批判的とは、コウモリが哺乳類であることを否定するのではなく、「羽があるから鳥の仲間に入れてもいいのではないか」と、既存の情報に自分なりの考えを付け足して思考することです。この思考が新しい発想の種になると信じています。アカデミック・アドベンチャーを通して、私自身も新たな発見の種に出会えることを楽しみにしています。

安部絢希(早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系 4年) 
「ほんもの」とそれそっくりの「にせもの」が並んでいる時、私たちは「ほんもの」の方が価値のあるものだと考えてしまいます。しかし、博物館には、「ほんもの」と同じように「にせもの」も飾られています。「にせもの」という言葉を聞くとどうしてもマイナスなイメージがついてきてしまうので、レプリカと呼びたいと思います。ではなぜレプリカが博物館に飾られているのでしょうか。「ほんもの」が貴重でこの場所に置いておけないからでしょうか。レプリカは「ほんもの」の代替物としての価値しかないのでしょうか。そうではない、それだけではないということを、博物館に飾られている人間の頭蓋骨をじっくり観察しながら、皆さんと一緒に考えます。キリンの骨やクジラの骨と並んでスポットライトを浴びているこの骨は、本当は何で出来ているのでしょうか。いつ、誰が作った物でしょうか。そして、なぜ作られ、この博物館に収蔵されたのでしょうか。私のアカデミック・アドベンチャーは、皆さんが自分の価値観を見直すきっかけ作りをしたいと思います。

杉山綾音(東京農業大学 地域環境科学部 森林総合科学科 3年)
皆さんは生き物がなぜその形をしているかを考えたことはありますか。私のアドベンチャーは「形」に注目しています。ヒトデはなぜ星形をしているのでしょう。生物にとって生き残る上で大切なことが二つあります。それは「どのようにして餌をとるか」と「敵からいかに身を守るか」です。これらを追求した結果、ヒトデにとってはこの形が適していたようです。インターメディアテクにはあらゆる分野の資料が展示してあります。形に注目して観察してみると、きっと新たな発見があると思います。例えば、サンゴと樹木の形がどこか似ており、世界共通でお金の紙幣が長方形で、硬貨が丸い形をしたものが多いように感じます。私たちが生活していると様々な形をしているものにたくさん出会います。疑問に思って調べてみると意外な理由が隠されているかもしれません。私のアドベンチャーでは、そのようなことを考えるきっかけを作りたいと思っています。

遠藤菜摘(多摩美術大学美術学部芸術学科 1年)
皆さんはミュージアムを訪れたとき、そこで何をするでしょうか。きっとそこで展示されているモノ(有名画家の絵画や動植物の標本など)を「観察」すると思います。でも、展示品の前に立つとき、私たちは本当にそのモノをよく観察できているのでしょうか。私のアカデミック・アドベンチャーでは、ミュージアムでごく当たり前に行われている「観ること」をテーマに、紹介する展示品のすみずみまで、みなさんに観察してもらうよう心がけています。例えば、江戸末期に撮影された肖像写真を見てもらい、その中で特徴的なものを取り上げつつ、約150年前の日本の姿を探っていきます。このアドベンチャーで観察するものの中には、写真に近づかなければ気づかない、男性の小さな「口ひげ」などもあります。このように、アカデミック・アドベンチャー、そしてインターメディアテクでは、まずはじっくりと「観察すること」、そして、その観察をもとに、自分が何を「発見したか」に注目しながら、これまでにない新しいミュージアム体験をしてほしいと思っています。みなさんと一緒にアドベンチャーへ出掛けられる日を楽しみにしています。

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