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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

中浜万次郎撮影の三宅艮斎写真
Gonsai Miyake photo by Manjiro Nakahama

 漂流者として名高い中浜万次郎(1827-1898)は、1860(万延元)年遣米使節の別行隊に通弁主任として登用され、咸臨丸で渡米した。そのさい、サンフランシスコで写真術を学び、湿板写真機と薬品を購入して日本へ持ち帰った。伊豆韮山代官江川英龍(1801-1855)の手附として江戸本所に住んでいた万次郎は、自宅で知人の写真撮影を行った。そのうちの一人、万次郎の主治医であったという蘭医三宅艮斎(1817-1868)夫妻を1862(文久2)年に撮影している。万次郎が撮影した湿板写真の原板には、ガラス面に独特な黒い樹脂が塗られ、ポジ画像を明瞭に見えるよう工夫されている。写真技術のみならず、写真を装飾したケースに入れて鑑賞するという文化も導入した。艮斎は1848(嘉永元)年に本所で外科医院を開業している。本草学に造詣が深く、兵学などの知識も豊富だった艮斎は、好奇心の旺盛な人物だったようだ。万次郎がもたらした最新の写真技術にも大いに興味を惹かれたに違いない。

白石愛(東京大学総合研究博物館特任助教)
Ai Shiraishi

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