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RESEARCHERS COLUMN

救荒植物図譜の行方

 『救荒食品図鑑』(第一輯、1944年、厚生省研究所国民栄養部研究会発行、非売品)という、簡素なつくりの本が私の手許にある。見開きの左ページには植物の名称と「異名・科名・産地・分布・可食部・採集時期・食用方法・薬用・各種成分等に関する諸事項」が記され、右ページには図版が載っている。本のサイズはA5判、図版は全部で70点。植物の「可食部」に目がいくように、各図の植物の配置には工夫がみられる。同書は1944年12月5日に発行された。栄養研究所が編纂公刊を企図するも実現せずにいたのを、厚生省研究所国民栄養部研究会が、国民の栄養状態と食料事情の緩和に役立てようと刊行したものである。凡例には「故西野猪久馬画伯が精魂を傾けて写生せる実物大彩色の救荒植物図譜中より70種を選出して」とある。西野猪久馬(1870-1933)は東大植物学教室勤務の経験を有し、植物学者の三好学や牧野富太郎のもとで植物画を描いた人物である。1922年、西野は牧野の紹介で栄養研究所に入り、晩年まで植物写生に従事した。西野が精魂を傾けて写した実物大彩色の救荒植物図譜は、今もどこかに残されているだろうか。

藏田愛子(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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