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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

夜間飛行

 先日、帰宅中の夜空から「チーチーチー」と聞こえる鳥の声がした。この時期になると聞くことのある声、渡り途中のツグミの声だ。鳥の多くは昼行性で、夜間は行動しない。ただし、行動「できない」わけではない。夜の間にねぐらを移動するカラスもいるし、小鳥だって寝ている間に危険が迫れば飛んで逃げる。ただ、昼ほどのパフォーマンスを発揮できないが故に、夜は無駄なエネルギーを使わずに寝ているにすぎない。一方、これは夜間なら猛禽類の目を逃れられる、ということでもある。よって、渡り鳥はしばしば、夜の間に飛ぶ。今はレーダーを用いて夜間の鳥の渡りを観察することもできるが、かつては満月の夜を選び、月面を横切って飛ぶ鳥の影を数える、という調査方法もあった。遊びで試してみたこともあるが、やってみると秋の地面は冷たいわ、双眼鏡で見る満月は眩しすぎて目に痛いわ、双眼鏡を支える腕は震えだすわ、なかなかに過酷なものであった。

松原始(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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