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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

彫刻の記憶

 石といえば石彫。古典美術においてごく当たり前であったこの公式が、現代美術において通用しなくなった。美術の古典的なジャンルが崩壊し、「インスタレーション」や「ミクストメディア」など複数のジャンルを横断する作品が増えるなか、石を淡々と彫刻作品に仕上げる作家が減ったからである。モデルをスキャンし、そのデータから3Dプリンターで立体物を自動的に製造できる時代には、彫刻技術自体が工業化している。一方、失われつつある彫刻技術への哀愁を漂わせる作品が多く観られる。シャルロット・モフの石版シリーズ『思考する作業、作業する思考』(2012-2013年)は、パリの広場に設置されたジュール・パンダリエスの大理石彫刻作品『労働者の休息』を部分的に撮影し、反復的にプリントしたものである。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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