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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

石のインデックス

 長さ5センチ、幅3センチのガラス板が800枚も並ぶインスタレーション『石のインデックス』。写真スライドにも見える、多様な模様が鮮やかに映るこれらのガラス板は、実は石である。1959年頃から1970年頃まで岩手県野田玉川鉱山、群馬県花輪鉱山、愛知県田口鉱山など国内各地で採集され、偏光顕微鏡で観察するために0.03ミリ程度の厚さに研磨した石の薄片から、石の知られざる「内面」がうかがえる。しかし、現代美術の文脈で展示されると、これら鉱物学標本は、インスタレーション作品となる。各プレパラートには、地図あるいは航空写真あるいは小宇宙のように、謎の「風景」が現れる。鉱物の同定や構造解析に役立った標本が、美的な視線の対象となった途端、詩的な表現のインスピレーション、抽象的な視覚表現の見本に見えてくる。文字通りの「石の想像界」である。

大澤啓(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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