JP Tower Museum INTERMEDIATHEQUE
HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

「山越」のウシ解剖模型

 IMTの2階に、ウシ解剖模型がある。紙製のそれはホルスタイン牛を象った縮小模型であり、背中を開くと、取り外し可能な臓器の模型が収められている。左半身の筋肉はむき出しで、教室にある人体模型を思い起こさせる。ラベルには「合資会社山越教育標本器械製作所製作」の文字。詳しい情報はほとんどないが、同じくIMTの2階にあるキノコ模型を製作した「山越工作所」と似た名前であるのが気になった。「合資会社山越教育標本器械製作所」の名前は、昭和14(1939)年の『帝国銀行会社要録』に初めて記載が認められるが、翌年に姿を消している。本模型の作成された年代は昭和14(1939)年頃と見て間違いないであろう。『帝国銀行会社要録』では、その前年の昭和13(1938)年から、『日本全国銀行会社録』では、昭和14(1939)年から、「山越工作所」の改組で誕生した「株式会社山越製作所」の記載が始まっている。2つの記録を見ると、合資会社は「滝野川区田端新町二ノ二九」、株式会社は「下谷区御徒町三ノ一」と、異なる住所が記されている。しかし、「山越工作所」の目録では、同営業所の住所が「東京市下谷区御徒町三丁目」、同工場の住所が「東京市滝野川区田端新町二丁目」となっていることから、両者が同一組織である可能性は高い。

秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)

Back to Column List