JP Tower Museum INTERMEDIATHEQUE
HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

展示とインテリアのはざま

 展示空間と建築インテリアとは同じ空間でありながら性格や表情に違いがある。展示空間は資料や標本の観覧が目的であるため、主役は展示物であり、建築インテリアとはそもそも訴求ポイントが違う。当館本館では現在「珠玉の昆虫標本」というタイトルの展覧会を開催中である。本展では壁という壁の全てを標本箱に入った昆虫標本で埋め尽くしている。デザインとしては、まぎれもなく生き物である昆虫が壁になって空間を構成するとすればどのような空間になるのかを極限にまで近づける実験だ。面白いことに近づいて見ると一つひとつは当然のことながら凝視に足るリアルな標本であるが、空間としては迫力あるインテリアにも感じられる。考えるに、びっしりと並んだ美しい標本の集合がある種壁紙のようであり、そこに一様に施されている標本箱のガラスカバーが均一化された内装素材の役を果たしているように感じられるのである。本展はまさしく展示とインテリアのはざまのようである。撮影:フォワード・ストローク

洪恒夫(東京大学総合研究博物館特任教授)

Back to Column List