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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

出版計画再構築中(8)

 だいぶ昔のことになる。編集者に企画書を届けて、結局、「ボツ」にされてしまった出版計画があった。築地小劇場の舞台写真集である。「築地」では、大正末期から昭和初頭にかけて、新興芸術が勃興した。小山内薫が興し、土方与志の率いた「ハイカラ」文化の拠点の一つであったのである。幸いにして、小山内をはじめ、築地関係者の残した資料体が手許に揃っている。1千点とは言わないが、5百点を超える写真で、ほぼすべての演目をカバーした資料集の刊行を目指し、デジタル化を進めていたのである。舞台芸術は一過性のものであり、役者の姿や美術の外観は写真にしか記録されていない。加えて、築地の全盛期は新興写真の勃興期でもあった。そのため、写真芸術における「モダニズム」の生成を探るフィールドにもなる。今日のデジタル画像処理技術が力を発揮するのは、このような出版企画ではないか。ただ図版を掲げるだけでは駄目である。画質で妥協することのない、美麗な出版物を産み落としてみたい。

西野嘉章(インターメディアテク館長・東京大学総合研究博物館特任教授)

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