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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

AIからIへ

 小石川分館の建築博物教室で、高村大也先生※に『ことばのアーキテクチャ −−人工知能による言語の理解』という講演をしていただいた(→概要レポート)。高村先生は自然言語処理と人工知能の先端的な研究者である。この講演を通して人工知能研究について多くを学び、また自分なりに考えるきっかけを得た。そのポイントは三つある。第一に、人工知能の目的は人間の知性の置き換えか、あるいは人間の知性の支援・強化なのか。人知の置換と考えれば社会全体への脅威にもなるが、ボトムアップ的な視点から見れば個々の生き方が開かれる可能性を感じる。第二に、人工知能との対話における受容(解析・認識)から創出(推論・生成)への展開。この後段のプロセスは特に興味深く、デザインや創作ができ、仮説形成や価値創造に結びつく人工知能に期待したい。第三に、人工知能の中枢をなす機械学習の方法論の逆活用。ディープラーニングの多層的な方法論を人間の日常行為にリモデル化して導入し、知の外部化に逆行する「知の再内部化」ができるのではないか。時間とともにAIのAが徐々に消えて、新たなIが立ち上がるかもしれない。講演に合わせて作られたアーキテクトニカ・コレクションは「語彙のネットワーク」の3次元モデルである。(※ 東京工業大学教授、産業技術総合研究所人工知能研究センター研究チーム長)

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)

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