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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

出版計画再構築中(5)

 欧米の古書店から送られてくるカタログは、好個の読み物の一つである。内容は、もちろん古書店の専門に拠って様々であるが、あるときから「本に関する本」という下位分類項目の存在を意識するようになった。これをもって「書誌学」的な視点、などと大げさなことを言うつもりもない。しかし、本を好きな人は本を書く、あるいは本について書くのも好きである、という単純な事実の発見は、自分にとって案外意味深いものであった。いまにしてそのように思う。結果的に、本好きが高じて、本についての原稿をいくつも書くことになったばかりか、本についての講演会もあちこちで開くことになったわけである。これらのテキストや資料は、他者の本に関するものと自分の本に関するものに大別できる。ということで、前者は『拙稿集』、後者は『拙著考』の表題で出版したいと考えている。それがいつの日のことになるか、先の見通しの立たぬ日々が、当分のあいだ続きそうである。

西野嘉章(インターメディアテク館長、東京大学総合研究博物館特任教授)

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