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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

紙に描かれた生物たち

 4月24日から、特別展示『ルドベック・リンネ・ツュンベルク――ウプサラ博物学三代の遺産より』が始まった。スウェーデンの誇る自然史学者、ルドベック、リンネ、ツュンベルクにまつわる貴重な資料を展示しており、それらスウェーデンより来た資料に加えて、東京大学所蔵の資料も関連展示として公開している。全体を見て感じるのは、生物が生きている時の姿をうつしとった図譜や図版の存在感の大きさである。写実性という点でいうと、スウェーデンのオロフ・ルドベック(子)が1693年頃から1710年にかけて出版した『鳥類図鑑』の図版は、今回剥製と並べて展示しているため、よりその精密さが際立っている。特に色彩の再現力や細やかな羽の表現には目を見張るばかりである。色彩といえば、明治10年頃に描かれた『梅園魚譜』(元は毛利元寿によって江戸後期に描かれたもの)も素晴らしい。魚のきらめきを表現するために、雲母や金粉と思しき画材を用いて描かれている。展示ケースの上からだけではなく横から見てみると、魚が照明を反射して更に生き生きとして見えるのである。描き手たちの工夫に思いを馳せながら眺めていると、あっという間に時間が経っていることに気がつくに違いない。

秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)

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