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HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

インテリジェンス

 教養学部前期課程で映像制作の授業を担当している。今年度の制作課題のテーマは「インテリジェンス」とした。AIの進歩が現実化し、シンギュラリティの到来が予測される中で、私たちの知性はどうなっていくのか。人間と社会の次なるイメージを映像で表現したい。2つのグループが作品を制作した。「知外法権」(高倉・石井・中尾・新井)は、高い知性をもつ人間が国家に抹殺される近未来社会で、システムの解体に立ち向かう3人の大学生を描いた作品である。国民の知性を集約した巨大な権力システムに対する闘争の物語であり、知性の外部化と制御の問題に着眼している。もう一つの「Minds, Brains, and Manuals」(星野・中畑・増渕)は、人々の日常的な会話や行動が「マニュアル」に依存することを発見した主人公が、自分の手引書と訣別するまでを描く作品である。チューリングテストに続く有名な思考実験「中国語の部屋」を出発点として、人間の内面や意識の不可知性を扱っている。どちらの作品も、AI のバラ色の未来予測に加担するというよりは、人間の知性に対する批判的な自問自答をベースにしている。骨太の問題意識を感じさせつつも、映像としてはスリリングで没入できる作品であった。(写真は「知外法権」)

松本文夫(東京大学総合研究博物館特任教授)

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