JP Tower Museum INTERMEDIATHEQUE
HAGAKI
RESEARCHERS COLUMN

モバイルミュージアム・ボックス

 2015年から16年にかけ、トヨタ財団の助成を受け、フィリピンにて移動型展示キットを制作した。箱の中に展示物を搭載してどこにでも出かけていき、蓋を開ければ展示が出来上がるというコンセプトをもつ「モバイルミュージアム・ボックス」は、ミンダナオ国立大学イリガン校等のキャンパス内で公開され、学生が日常の大学生活を送る中で、意図しなくてもミュージアムに接する機会を作り出した。重要なのは、プロジェクト期間終了後の展示キットの運命である。私のような外部の人間の関与や外部予算がなくなった途端に「モバイル」しなくなるようでは、現地の人たちにとって本当に必要とされていたとは言えない。フィリピン人の共同研究者とともに、展示キットの継続的な活用をいかに可能にするかを見据え、展示内容や箱のデザインの決定といった、本プロジェクトのさまざまな進行段階で、現地の人たちを巻き込むことをプロジェクト・デザインの柱にした。幸いにして、その後も、このキットはミンダナオ島内で「モバイル」しているとの報告が届いている。

寺田鮎美(東京大学総合研究博物館特任准教授)

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